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「こどもの発想。」蛇足。


先日出版した「こどもの発想。」がおかげさまで好評のようです。

お買い上げいただいたみなさま、誠にありがとうございます。そしてまだご購入されていないみさなま、お買い上げありがとうございます。(よくトイレに貼ってある『いつもきれいに使っていただいてありがとうございます』的先回り感謝)

「こどもの発想。」はいまから10年ほど前、コロコロコミックで僕が連載していた「コロコロバカデミー」という読者投稿ページから、相当数を抜粋&再編集したものです。下記のリンクでその一部がご覧になれますので、未見の方は是非どうぞ。


http://bakadrill.heteml.jp/pc/2011/01/post-27.html


「こどもの発想。」に関する思いや感想などは、本書の中にも拙文を寄せてあるのですが、割と本全体のテイストを考慮して書いたものなので、ここではもう少し個人的かつ蛇足的な所感を、誰に頼まれるでもなく記しておこうと思います。


まず掲載したネタについてですが、これは連載時の採用分に加え、大人の事情でやむを得ず掲載を見送ったボツ作品を、なるべく多く載せることを心掛けました。本音を言えばそれをお見せしたかったというのが出版の動機でもあります。

当時、いくら読者向けのお笑いコーナーと言えど、そこは天下のコロコロコミック。全国小学生とその親御さんが見守る中、まるっきりフリーダムとはいきませんでした。当たり前のことですが、採用にはある程度の道徳的基準を設け、読者がぎりぎり許容できる範囲の選考を目指したつもりです。...それでも連載中は下品過ぎるというお叱りもかなり受けましたが。


しかしやはり、本当に面白いハガキは、大人の事情を発動せざる得ない、ボツの中にこそあります。大人では決して考えられない、また思いついても書かねえよ!という言葉や絵を、子供は平気で書いてきます。しかも採用される気マンマンで。毎月それらのハガキに腹を抱える選考会は、実に至福のひとときでありました。

おそらくお子様がいるご家庭なら誰もが知ってて、でも隠している、そういう野性的な子供の魅力をどうにか発表して、世間と共有したいという思いがずっとありました。実はそれでも本書に掲載できなかったネタ(そこは想像してください)はたくさんあるんですが、とりあえず、その氷山の一角はお見せできたと思います。


毎月ダンボール何箱ぶんも送られてくるハガキの内容は、ほとんどがシモネタとテレビネタ、そしてまったく理解できない身内ネタ、と言ったところでした。ちなみにシモネタは意外にも、女子からの投稿も多かったです。男女の発育の早さから言うと当然なんでしょうが、男子より数段進んでいる女子のシモネタは頼もしくさえありました。

もちろん中には大人も唸るセンスを持った子供もいます。大半がうんこネタなだけに、そういうハガキはキラリ!と目立つんです。そしてこれは僕の個人的な好みもあってのことですが、なぜか同じ子供が何度も採用される、何千通もの応募の中から自然と常連が生まれるのは、不思議な経験でした。


「こどもの発想。」は、連載終了から約7年を経て世に出されたという、奇妙な経緯を持った本です。でもそれがよかったんだと思います。

当時はそれこそ自由過ぎる子供たちの発想に、こちらも熱に浮かされ気味で、この「お宝」の重要性をちゃんと理解できていなかったような気がします。

考えてみれば小学生、とくに本書でのエースとも言える小学四年生くらいの子供は、人の成長過程において、ちょうど社会的な自我に目覚める過渡期にあたるんじゃないでしょうか。それまでは学校に通いながらも、家庭の中で安逸としていた子供たちが、この年頃を境に、無意識ながらも自分と世界の関係性について考えはじめる。世間における自分の立ち位置を意識しはじめる。いまで言うところの「空気を読む」を覚え始める。だとすれば、下手くそな文字で書かれたシモネタや不謹慎語も、彼らの「最後の抵抗」のようで、なんだか少し泣けてきます。


しかし「最後の抵抗」は「最初の手探り」でもあります。子供の自由はいったん否定されますが、そこからが新しい自由に向けての出発とも言えます。本能的な自由をあきらめ、他人と共有できる自由を模索するのは、大変な作業だけど、それもまた楽し、です。

前述の通り、本誌の連載中にはさまざまな規制があり歯がゆい思いもしました。でもいまにして思えばそれが社会と子供をつなぐ児童誌の責任だったことも分かります。

...と言いつつも、たまには小学生に戻ってもいいじゃない!本能丸出しでバカ笑いしてもいいじゃない!というのが本書の基本スタンスであることに変わりはありません。単純に楽しんで頂きつつ、さまざまな感想を持ってもらえればうれしいです。自由に。


そして最後に。ハガキの大半はシモネタでしたが、同じ「うんこ」という字にも、すべてにその子なりの個性があります。ひとつとして同じうんこはありませんでした。世界に一つだけのうんこです。本能から乱反射するそれぞれの輝きは実に多様です。本当は全員載せたかったなんて言い草は、選考側の常套句ですが、そう言わずにはおれない感動がありました。いいもの見せてもらいました。しかも印税までもらってしまいます。辞退しません。当時の読者ならびに投稿してくれた子供たちに心から感謝します。以上!



天久聖一




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